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広報戸田市 2022年2月号

健康づくりや地域振興を目指して TODA×日本薬科大学連携事業を進めています

市と日本薬科大学は、さまざまな分野で連携して取り組むことを目的として、令和3年11月2日に包括連携協定を締結しました。今回は、日本薬科大学が持つ薬学・健康学の知見を生かし、市民の皆さんに健康増進に関する情報や戸田市に縁があ る植物についての情報をお届けします。

食べ方の工夫で予防ができる!? 健康維持のための食べ方

日本薬科大学 漢方薬学分野 講師 糸数 七重

《医食同源》あるいは《薬食同源》―古代中国医学の知恵の一つとしてよく言われる言葉ですが、これらの言葉そのものの出典は定かではありません。しかし、唐代に記された書物に「医者の仕事は病因の所在をつきとめ、食物で治す。食物で治らないとき、薬物で治す」(『千金方』巻26 食治編)、「穀物・肉類・果物・野菜で空腹をみたすなら食物といい、病気を治療するなら薬物という」(『太素』調食編)などの文言が記載されていることから、古代より「食は身体の不調を癒しうるものである」と考えられていたことが分かります。
科学の発展に伴い、現代においてはさまざまな医薬品が開発され、すでにかかっている病気を治すのは薬であるとされています。一方で「病気にならない身体」「症状を軽減させる身体」をつくることについては日常の「食」こそが重要とも言えますので、今回は、何かと悩まされやすい諸症状について、食べ方の工夫次第で避けられる方法を紹介していきたいと思います。
  1. 風邪予防
    いよいよ寒さが厳しくなってくると、冷えから体力を奪われて体調を崩してしまいます。場合によってはウイルスに感染して風邪をひくことも増えてきます。冷たいものより温かいもの、生もの(生野菜や刺身など)よりも火を通したものを選びましょう。消化で胃腸を疲れさせることも冷えと同様に体力を消耗しますので、揚げ物よりも蒸したり煮込んだり、胃腸に負担をかけない調理法を選ぶことも大事です。ビタミンの補給に…と果物を食べる際は、活動することで身体が冷えにくくなる午前中~昼過ぎまでに摂るのがお勧めです。そのほか、ネギや生姜など辛味のある香味野菜やスパイスの活用も、身体を温め、血行を促進させるので風邪を引きにくくなります。ただし、温めすぎて汗をかいてしまうと、汗が冷えた時に、却って身体を冷やしてしまうことにもなりかねませんので、汗ばんできたら早めに拭き取ったり、着替えをする必要があります。また、中医学では発酵度の高いものは身体を温めると考えられているため、冬には緑茶や烏龍茶類ではなく、紅茶になるまで完全発酵させたお茶を選ぶよう勧めています。
  2. 肌の乾燥対策
     漢方や中医学では、健康な状態を維持するには体内を気・血・水の三要素が滞ることなく巡っているようにするのが大切であると考えます。水の枯渇を防ぎ、水や血を滞ることなく巡らせることで、肺が潤い、健全で潤いのある皮膚が保たれます。この種の潤いを保つための食品としては「白い食品がよい」とされています(白というのは陰いん陽よう五ご行ぎょうの考え方によるものですが、何が良いかということをイメージする助けにはなります)。中でも大根や長芋などは、消化器の働きを助け、水の巡りを支えるエネルギーを食物から取り出しやすくするとされています。いずれも生でも食べられる食材ですが、冷えを感じやすい時期は調理してから食べるのがお勧めです。他にも最近手に入りやすくなってきた白きくらげなども肌の乾燥を防ぐ食材として優れており、戻した白きくらげを果物やドライフルーツと一緒に氷砂糖を加えて煮込んだ甘いスープは、美肌のためのメニューとして台湾などで非常に人気が高いものです。
  3. 花粉症対策
    花粉症などの症状は、漢方的には冷えと頭部での水の滞りが原因となって起きると考えます。冷たいものや生ものを避けるのは風邪予防と同様です。その他、甘いもの、脂っこいもの、濃い味付けのものなども余分な水の滞りを生むと考えられていますので、花粉症の季節が近づいてきたら控えめにするのがよいでしょう。逆に、小豆やハトムギなどは余分な水の滞りを除きます。その他にも豆類は全般に身体の気の巡りを促進し、種々の滞りを防ぐと考えられるため、豆・豆製品を使った料理を選ぶようにすれば、花粉症を回避する食習慣になると言えます。

戸田ヶ原の再生に想いを馳せて トダスゲ、トダシバ、サクラソウ

日本薬科大学 漢方薬学分野 准教授 山路 誠一

本学と戸田市の連携協定締結に伴い、いつか来ると思っていた執筆依頼ですが、先駆けを務めるにしても、漢方や薬用植物と戸田市との強いつながりは…情けないかな、思いつきませんでした。

実際、戸田といえば漕艇場や戸田公園がイメージされます。埼玉県は自然豊富な山間部に対して、県南平野部では目立った植物は少ない印象です。しかし、市南部の荒川河川敷一帯には古くは湿地があり、かつては“県花”サクラソウPrimula sieboldii E. Morrenの咲き誇った戸田ヶ原がありました。現在、彩湖・道満グリーンパークのある一帯の端では、わずかに残ったこの戸田ヶ原湿地跡をテコに、湿地を再生する取り組みが行われておりますが、そこでは戸田の名を冠したトダスゲ Carex aequialta Kük.やサクラソウなどが移植、保全され、さいたま市の田島ヶ原同様、知名度を上げています。

戸田の名が冠せられた植物は、このトダスゲのほかにも数は少ないながらもありますので、今日はトダシバ Arundinella hirta (Thunb.)Tanakaを取り上げたいと思います。

トダシバは埼玉県だけでなく日本に広く分布する“戸田”の名を持つ植物で、イネ科トダシバ属という分類群に属します。この植物は北半球の温帯地域の北海道から本州〜九州〜中国を経て、北インドにまで分布します。ただ、写真に見られるように、一般的には“雑草”に間違われそうな植物であり、サクラソウとは対照的な存在といえそうです。

しかし、このようなイネ科植物やトダスゲなどのカヤツリグサ科植物は、湿地を構成する大切な植物の一群です。戸田ヶ原の再生とともに、かつて荒川流域に繁茂した植物を知ることは、関東平野の自然を知り、科学的観点を養う上で大切な要素となるはずです。今後、市民の皆様の関心がこうした植物にも向けられれば、戸田ヶ原が戸田市や埼玉県、ひいては日本のかけがえのない財産として誇れることでしょう。


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